Research
B細胞分化機序の解明
🅱細胞はプラズマ細胞へと最終分化し、抗体を分泌することにより感染防御にあたります。そこに至るまでに、B細胞は胚中心B細胞となって抗体のクオリティーを変化させます。また、B細胞は記憶B細胞へと分化し、免疫記憶の役目を果たします。逆に、B細胞は自分自身を攻撃する抗体(自己抗体)を産生することもあり、自己免疫疾患の増悪因子となります。このように、適切なB細胞分化が生体防御において重要です。私たちは、B細胞の分化を支える細胞内因子(遺伝子発現、シグナル伝達、エピジェネティクス制御、BCRレパトア)や環境因子(場所、時間、老化、細胞間相互作用)を明らかにすることで、正常と異常なB細胞分化を理解することを目指しています。
免疫応答を抑制するB細胞の全容解明
🅱細胞は自己免疫疾患、炎症、アレルギーの原因となったり病態を悪化させたりすることが知られていますが、それとは逆に、免疫反応を抑制するB細胞として「制御性B細胞」の存在が明らかにされ注目されています。特に、抗炎症性サイトカインIL-10を産生する制御性B細胞は、さまざまな疾患モデルマウスを用いた研究から、炎症や自己免疫疾患、さらには、感染免疫や腫瘍免疫などに対する抑制能がつぎつぎと示され、その制御の対象は多様であることがわかってきました。さらに、IL-10以外の機序により免疫を抑制する制御性B細胞の存在も示唆されており、この研究領域は発展しつつあります。私たちの研究室では、in vivoにおけるIL-10産生制御性B細胞としてプラズマブラストを同定し、自己免疫性脳脊髄炎に対する抑制作用を示してきました。現在、制御性B細胞の実体、分化機序、疾患抑制メカニズムの解明に取り組んでいます。また、ヒト制御性B細胞の誘導培養法の開発も行っています。
免疫寛容の維持と自己免疫疾患発症メカニズムの解明
🅱細胞には自分自身の細胞に反応する自己反応性B細胞を除去または不活化するシステム(自己免疫寛容)が備わっています。この機序はゲノム、エピゲノム制御だけでなく、老化により影響をうけることがわかってきており、このシステムの破綻により自己免疫疾患を発症することがあります。私たちの研究室では、B細胞免疫寛容が誘導・維持される仕組みを分子レベルで明らかにすることにより、自己免疫疾患病態の理解に取り組んでいます。
加齢に伴う免疫機能低下とB細胞変化
🅱細胞は液性免疫の要となりますが、老化による影響はよくわかっていません。年齢を重ねるごとに免疫機能が低下していく免疫老化は、慢性炎症、感染症の重症化や免疫寛容維持機構の破綻による自己免疫疾患発症に密接に関係しますが、それら現象を支えるメカニズムは不明な点が多いのが現状です。私たちは、B細胞の加齢に伴うサブセットや機能変化を明らかにすることで、免疫老化やそれに伴う疾患発症機序の解明を目指しています。
カルシウムシグナルと免疫応答
🅱細胞が抗原と出会い、活性化・分化するためには、B細胞抗原レセプター(BCR)による抗原認識が必須です。その情報はシグナル伝達として細胞内に伝わります。私たちは、このBCRシグナル伝達の分子メカニズムやその生理的な意義について研究を進めてきました。特に、BCRシグナルの主要イベントである細胞内カルシウム上昇(カルシウムシグナル)や小胞体恒常性維持に焦点をあてています。普遍的なカルシウムシグナルや小胞体恒常性が、どのように特異的な生理応答を示すのか?その仕組みを明らかにしたいと考えています。
ヒトB細胞免疫学の研究
🅱細胞の分化や性状はマウスとヒトで異なることが多い。将来の医学応用を視野に入れ、ヒトB細胞研究にも取り組みます。ヒトにしかみられないIgG4陽性B細胞や、BCRレパトア、制御性B細胞を中心に、ヒト免疫疾患との関連を明らかにすることを目標とします。